大判例

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福岡高等裁判所 昭和31年(う)5号 判決

原判決中犯罪事実の部と法令の適用の部とを読み合せると同判決に無謀な操縦とは法令に定められた運転の資格を持たないで自動三輪車を運転した事実のみを指すものであること洵に明白である。よつて進んで無謀操縦(無免許運転)と右操縦中における重過失致死との関係に付按ずるに無謀操縦罪(無免許運転に基く)は運転を開始すると同時に成立するのであるから本件重過失致死における被告人の重過失行為並結果発生の何れの時よりも以前に本件無謀操縦罪は成立していたわけであつて、偶々被告人が本件重過失致死罪の着手当時、なお無謀操縦中であつたとしても、無謀操縦行為と重過失行為とは法律上別個の行為であると解するを相当とする。(最高裁昭和二五年(れ)第一五四四号判決、第五巻第三号参考)そうだとすれば刑法第五十四条第一項前段を適用処断した原判決には法令誤用の違法があり右違法が判決に影響を及ぼすものであること明らかである。従つて本件控訴は理由がある。

よつて刑事訴訟法第三百九十七条第四百条但書に則り原判決を破棄し、次の通り判決する。

被告人は

第一、法令に定められた運転の資格を持たないに拘らず昭和三十年八月二十七日午前七時三、四十分頃熊第六―一一五一〇号自動三輪車を操縦して熊本県球磨郡川村字深水部落を人吉市に向け出発し同村大字柳瀬小田勝尚方前方路上まで運転進行し、

第二、右出発に際し該三輪車の荷台に平田東助、守永司を同乗せしめ途中同村役場前で豊福トキエ(三十五年)を助手席に同乗せしめ時速約四十五粁位で前記小田勝尚方前にさしかかつた際該場所は十字路であつて人吉市方面に向うには右折しなければならないのであるから三輪車を運転する者はかかる場合他物への衝突は勿論、自己の三輪車の転覆等不慮の事故を避ける為十分速度を落し除行すべき注意義務を有し、特に本件の場合の如く人を乗車せしめている場合特にその義務の加重さるべきこと勿論である。しかるに被告人はかかる注意義務を守らず漫然前示速度を以て進行を続け、ハンドルを右に切つた為後部右側車輪が空間に浮くやあわててプレーキを踏んだ結果、助手席から豊福トキエを地上に振落し、その上に右三輪車の車体を横転するに至らしめ、為に同女をして胸部内出血に因り同所において即死するに至らしめたものである。

右の事実は原判決挙示の証拠によつてこれを認める。

法律に照らすと被告人の判示所為中無謀運転の点は道路交通取締法第七条第一項第二項第二号第二十八条第一号に、重過失致死の点は刑法第二百十一条後段に各該当するので所定刑中前者に付、罰金刑(罰金等臨時措置法第二条)、後者に付、禁錮刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十八条第一項本文に則り右罰金額並刑期範囲内において被告人を主文の刑に処し労役場留置に付刑法第十八条を適用すべきものとする(なお刑事訴訟法第百八十一条第一項但書適用)。

(裁判長裁判官 柳田躬則 裁判官 青木亮忠 裁判官 尾崎力男)

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